東京オリンピック男子バレーボールの日本-イラン戦で発動された「レフェリーチャレンジ」が話題になっています。
「レフェリーチャレンジ」により31点目を獲得し第3セットを奪ったイランに対し、
SNSには「イランのゴネ得」「チャレンジが多すぎ」「審判はイラン寄り」などの批判が寄せられています。
「レフェリーチャレンジ」を行使したイランはズルいかのような論調が多いように思われますが、本当にそうなのでしょうか。
そこで、今回は「レフェリーチャレンジとは?バレーボールでのイラン狙いと効果」と題し調査しました。
この記事では
・レフェリーチャレンジしたバレーボールでのイランの狙いは?
・レフェリーチャレンジの効果はあった?
このような疑問を解決します。
レフェリーチャレンジとは?
FIBV(国際バレーボール連盟)のルールによれば、「レフェリーチャレンジ」とは「チャレンジ」と呼ばれるビデオ判定のことです。
國部雅大「チャレンジシステムの分析によるバレーボールのレフェリーにおける判定の正確性に関する研究」(「バレーボール研究」第19巻第1号P.51-57, 2017)によれば、
「チャレンジ」はバレーボールの他に、テニス、アメリカンフットボール、野球、バドミントン、レスリングなどの競技にも導入されているそうです。
バレーボール国際大会への本格的な導入は2013年からで、2014年の世界選手権、2015年のワールドカップで導入され、
反則行為が指摘されなかったときや、ボールのイン・アウトの判定のために活用されています。
「1チーム1セット2回目のチャレンジが失敗すると、それ以上のチャレンジはできない」
つまり、チャレンジが成功すれば2回失敗するまで何度もチャレンジすることができます。file:///C:/Users/Owner/Downloads/Video%20Challenge%20System%20Regulations.pdf
レフェリーチャレンジしたバレーボールのイランの狙いは?
イランの狙いも、より公正な判定だったと思われます。
結果的にイランに有利な判定になりましたが、それはビデオ判定により認められた結果です。
日本側も、誤判定で勝つのは後味が悪いもの。
「チャレンジ」発動により、双方にとって納得のいく公正な判定を導くことができたのではないでしょうか。
ビーチバレー世界協会 Angelo Squeo監督も「チャレンジ」の導入に肯定的です。
USA Today (2016年8月8日)
https://www.usatoday.com/story/sports/olympics/2016/08/08/volleyball-replay-challenge-system-at-olympics-for-1st-time/88434122/
チャレンジ導入の目的は、試合の透明性を高めること。
競技場で起こったことを、ありのまま判定する試合にしたい、選手が納得するような判定にしたい、というのが目的だ。「チャレンジ」は、判定ミスによる誤った試合にしないために、選手も観客も納得のいく試合にするために、必要不可欠だ。
レフェリーにとって判断の難しい場合もあるので、「チャレンジ」の導入は効果的と受け止められているようです。
レフェリーチャレンジの効果はあった?
レフェリーチャレンジを行使したイランは、最終的に「チャレンジ」により、31点目を得たことで第3セットをとりました。
よって、レフェリーチャレンジは効果があったといえます。
國部雅大は「チャレンジシステムの分析によるバレーボールのレフェリーにおける判定の正確性に関する研究」(「バレーボール研究」第19巻第1号 2017)において、2016年のリオ・オリンピックのバレーボールの全76試合の「チャレンジ」を分析しました。
https://ci.nii.ac.jp/naid/120006364171
その結果、リオ・オリンピックのバレーボール全試合のチャレンジ成功率は40.8%だったといいます。
全試合のチャレンジ数計400回で1試合平均5.3回(SD:2.7回)
1セット平均1.5回(SD: 1.1回)
チャレンジ成功数は163回,1試合平均2.1回(SD: 1.6回)
1セット平均0.6回(SD: 0.8回)
つまり、「チャレンジ」は公式大会でごく一般的に行われ、成功率も高いことがわかります。
また、ブロッカーのボールコンタクトに関するチャレンジ成功数とチャレンジ成功率が他のプレーに比べて高かったことから、レフェリーにとってブロッカーとボールの接触が最も難しい判定のひとつだということもわかりました。
まとめ
以上、「レフェリーチャレンジとは?バレーボールでのイラン狙いと効果」をご紹介しました。
- 「レフェリーチャレンジ」とは「チャレンジ」と呼ばれるビデオ判定のこと。
- 「チャレンジ」は試合をより公平に判定するため複数の競技で導入されている。
- バレーボールの「チャレンジ」は1チーム1セット2回失敗するまで何度も可能。
- 「チャレンジ」のバレーボール国際大会への導入は2013年。
- リオ・オリンピックでの「チャレンジ」成功率は40.8%
- リオ・オリンピックでは、ブロッカーのボールコンタクトに関するチャレンジが成功数・成功率ともに高い。
- レフェリーにとってブロッカーとボールの接触が最も難しい判定である。
「チャレンジ」はバレーボールの試合をより公正な判定にするために有効なルールであることがわかりました。
相手チームの「チャレンジ」で味方チームが不利になると、応援している私たちはがっかりするあまり、つい感情的になってしまいがち。
でも、そもそも「チャレンジ」はより公正な判定をするためのルール。
「チャレンジ」による公正な判定は、相手にとっても味方にとっても利益になるはずです。
オリンピックという機会に、「チャレンジ」について知ることができたのは、私たちにとってよい経験でした。
今後もより公正な判定を期待したいですね。